不調の根本原因を紐解く:「認知の歪み」
「私の身体はもうボロボロで、一生この痛みと付き合うしかないんだ……」 病院でレントゲンやMRIの画像を見せられ、そう絶望していませんか?
実は、こうした「もう治らない」という極端な思い込みのことを、医学的には「認知の歪み」と呼ばれます。
最新の脳科学では、この「認知の歪み(恐怖や不安)」そのものが、脳の痛みのセンサーを暴走させ、痛みを何倍にも強く長引かせている原因であることが少しずつ分かって来ました。
つまり、画像に写し出された自分自身の身体の状態に絶望を感じ、諦めてしまうこと自体が、痛みを長引かせる最大の原因になっているのです。
そこで、今回は、画像検査の見た目や検査の数字だけに惑わされないための「痛み」について解説します。
認知の歪みとは
「認知の歪み(にんちのゆがみ)」という言葉は、少し難しく聞こえますよね。
しかし、慢性痛から抜け出すためには、この仕組みを理解することで、早く現状を変える手助けとなるかもしれません。
まずは、「認知の歪みとは一体何なのか?」、そして「なぜそれが激しい痛みを引き起こすのか」について、解説してまいりましょう。
「認知の歪み」とは、一言で申しますと、「脳に定着してしまった、事実とは異なる『極端な思い込みのクセ』」のことです。
私たちは、目の前の出来事をありのままに見ているのではなく、自分自身の「認知のフィルター(価値観や過去の経験)」を通して受け止めています。
このフィルターが、ストレスや不安、過去のトラウマによって偏ってしまい、物事を必要以上にネガティブに捉えてしまう現象を「認知の歪み」と呼びます。
これはもともと心理学(認知行動療法)の用語ですが、実は「長引く慢性痛」と非常に深い関係があることが最新の脳科学で証明されています。
「認知の歪み」が痛みを10倍に増幅させるメカニズム
なぜ、脳の「思い込み」が身体にリアルな痛みを作り出すのでしょうか?
そのプロセスは以下の3つで起こります。
【ステップ1:誤った刷り込み(認知の歪み)】
「画像で骨が変形していると言われた。私の体はもうボロボロで、二度と元に戻らないんだ」と極端に思い込む。
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【ステップ2:脳の警戒アラートが作動】
脳が「体の一大事だ!」と判断し、強い不安や恐怖(ストレス)を感じる。
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【ステップ3:痛みのブレーキが壊れる】
脳の「痛みを和らげるシステム」が正常に働かなくなり、わずかな筋肉のコリや刺激でも、脳が「激痛」として感知してしまう。
本来、人間の脳には「痛みのブレーキ(下降性疼痛抑制系)」という素晴らしい機能が備わっています。
しかし、認知の歪みによって不安や恐怖が慢性化すると、このブレーキが完全に効かなくなってしまいます。
つまり、「画像(見た目)への恐怖心」という頭の中のストレスが、身体の中で「本物の痛み」を何倍にも膨らませて長引かせているのです。
慢性痛の人にありがちな「代表的な3つの認知の歪み」
治療院に来られる慢性痛のご来院者の方には、以下のような「認知の歪み(思考のクセ)」があるとされています。(当院に限らず、一般的にということです。)
① 破滅化思考 (最悪の事態ばかり考える)
思考パターン
「このまま一生歩けなくなって、寝たきりになるかもしれない」
痛みに与える影響
脳が常に強い恐怖を感じ、痛みのセンサーが極限まで敏感になります。
②白黒思考 (オール・オア・ナッシング)
思考パターン
「痛みが10から3に減ったけれど、完全にゼロ(0)にならないなら、この治療は全く意味がない」
痛みに与える影響
わずかな改善(回復の兆し)に目を向けられず、自ら治癒力を下げてしまいます。
③ 感情的な思い込み
思考パターン
「こんなに痛くて気分が重いということは、私の身体の中で絶対に大変な病気が進行しているはずだ」
痛みに与える影響
感情(不安)を事実と混同し、画像診断の「骨の変形」という言葉と結びつけて恐怖を強化します。
なぜ画像に「変形」があっても痛くない人がいるのか?
「認知の歪み」に関して、理解していただけたでしょうか?
さて、ここからは、整体治療院として考える「認知の歪み」に関してです。
突然ですが、整形外科でレントゲンやMRIを撮り、『骨の間が狭くなっている』『軟骨がすり減っている』と言われて、ショックを受けた経験はないでしょうか?
「椎間板ヘルニア」だと診断された方も、自分の腰椎や頸椎を見せられ、「ここが飛び出ていますね」と言われると、「あぁこんなふうになっているんだから、痛くても仕方ない」、「痛みがあって当然だ」と思い込んでしまいます。
しかし、冷静になって考えてみてください。
本当にその画像のようなことが原因で「痛みや症状」が出ているのでしょうか?
例えば、椎間板ヘルニアの方には「波がある」とおっしゃいます。
調子が良い日もあれば、悪い日もあると言うのです。
しかし、おかしいですよね。
調子の良い日には、ヘルニアが引っ込んでいて、調子が悪い日には、余計にヘルニアが出ているのでしょうか?
そんなことはないですよね。
椎間板ヘルニアに限らず、狭窄症も変形も、調子の良い悪いで形が変わるわけではないんです。
常に画像の通り、出っ張っているところはそうなっているでしょうし、狭くなっているところが日によって広がるなんてことはありません。
もし本当に画像の変形やヘルニアの突起だけが痛みの直接原因であれば、変形した骨が日によって元に戻ることはないため、24時間365日まったく同じ強さで痛みが続くはずです。
日によって痛みや症状が変わる原因は、骨の形状ではなく、その周囲にある「筋肉の緊張(血行不良)」や「その日のストレス度合い」、「自律神経の乱れ」といった、画像には写らない要素が関係しているのではないかと考える方が、自然なのではないかと思います。
ヘルニアはマクロファージが、、、
例えば、「椎間板ヘルニア」。
ヘルニアには飛び出るという意味があり、「腰椎椎間板ヘルニア」が有名ですが、「頸椎」にもヘルニアが起こることはありますし、鼠径ヘルニア(腸や脂肪組織が皮膚の下に飛び出す疾患)なども知られていますよね。
それで、腰椎椎間板ヘルニアに戻りますが、飛び出てしまった椎間板は、”一生そのまま”というわけではありません。
マクロファージ(白血球)が異物として処理してくれるといった報告があります。
手術をしなくても、自然になくなってくれるのです。
一般的に一度画像を撮った人は、再び撮影するなんてことはなく、しばらく「自分は椎間板ヘルニアになってしまった。重症だ。痛くなって当然だ」といった思考に陥ります。
しかしながら、半年後、一年後に再び撮影してみると、普通になくなっていたということも多々あるのです。
ですから、「自分はヘルニア持ちだから、一生腰痛なんだ」と思い込む必要は全くなく、そういった思い込みはむしろ回復までの道のりから遠ざかっているのです。
つまり、そうした思い込みが「認知の歪み」となるのです。
慢性痛の人に多い「認知の歪み」
慢性痛を抱える方々には、特有の考え方(認知の歪み)が見られることがあります。
例えば、
- 「絶対に悪化する」
- 「一生治らない」
- 「動いたら危険」
- 「100%治らなければ意味がない」
- 「以前できたことは今もできるはず」
- 「○○さんができるなら私もできなければならない」
- 「何があっても頑張らなければいけない」
上記のような考えをしてしまう(植え付けられてしまったとも言えます)ことがあります。
こうした考え方は、痛みが長引いているときには、自分自身を追い込み、痛みをさらに強めてしまうことがあります。
恐怖回避思考という悪循環
上記した慢性痛の方の「思考」の加えて、「恐怖回避思考」といったものもあります。
痛みを感じる
↓
「悪化するかもしれない」と考える
↓
動かなくなる
↓
筋力や体力が低下する
↓
さらに痛みが強くなる
この悪循環が続くことで、身体だけでなく気持ちまで落ち込み、慢性痛が固定化されてしまいます。
痛みは脳で感じている
「痛み」は、痛い箇所(患部)だけで発生しているものでもありません。
「痛み」の信号は、患部から脳へと送られますが、
脳は、
- 過去の経験
- 感情
- 不安
- ストレス
- 記憶
などの情報も処理し、「痛み」を判断しています。
ということは、上記のように「不安」や「恐怖」が強いほど「痛み」を強く感じてしまうのです。
また、脳には注意を向ければさらに痛みを感じやすくなる性質があります。
私たちの脳は膨大な情報を処理していますが、実際に意識できる情報はごく一部です。
つまり、痛みにばかり意識を向けていると、脳は痛みを優先的に処理し、より強く感じるようになります。
例えば、「常に痛い」、「24時間ずっと痛い」とおっしゃる方も、ちゃんと質問していくと、「食事の最中は痛みを感じていない」、「友達とおしゃべりしている間は痛くなかった」というようなことをおっしゃいます。
つまり、「24時間いつでも痛い」と思い込む(思いたい)ことで、本当は日常生活の中で「痛くない瞬間」もあることを見逃している(見ないようにしている)のです。
情報の選び方も重要
人は自分の考えを裏付ける情報ばかり集める傾向(確証バイアス)があります。
「椎間板ヘルニアは治らない」
「一生腰に爆弾を抱えて行かなければならない」
「狭窄症は悪化するだけ」
そういった情報ばかりを目にしていると、不安はさらに強くなります。
不安を煽るような情報ばかりを目にしてしまう、そういった情報ばかりを集めてしまう傾向があるのです。
認知の歪みが痛みを増幅させる
ここまで何度も「認知の歪み」について言及してまいりましたが、「私の骨はボロボロだ」「もう治らない」という強い不安や恐怖を抱くと、脳は警戒モードに入り、「痛みのセンサーの感度」を極限まで引き上げてしまいます。
例えば、ギックリ腰であっても、本来であれば、数日で回復するはずのものが、不安を煽るような情報に振り回されると、不安や緊張が強くなり、その結果「痛み」がなかなか取れないことになってしまいます。
それは、腰の状態の問題ではなく、「不安や緊張で痛みが増幅された結果」なのです。
正しい情報を手にし、「画像はただの結果であって、必ずしも痛みとは関係がない」と安心していただくことで(認知の歪みを手放す)、脳の興奮を鎮め、痛みを根本から消していく「治療」になっていくのです。
まとめ
さて、ここまで「認知の歪み」をテーマに文章を進めて参りました。
当院は、「痛み」や「症状」の原因は、一つとは限らないと考えています。
X線やMRIに写される画像だけで「痛み」は起こりません。
全く痛みを感じていない人でも、腰椎に変形があったり、狭窄があったりしています。
例えば、画像上で痛みの原因と思われるものを見つけられるのは、約15%ほどと言われます。
つまり、画像を撮った人の中でも、診断名が付くのは、約15%。
85%の人は、画像に写らないため、原因が不明だとされてきました。
しかし、その85%の方々も痛みや症状で困っているのです。
反対に、痛みのない方でも、画像上の異常が見られることもあります。
つまり、本当に画像に写ったものが全てなのか、もう一度よく考えてみる必要がありそうです。
・身体的ストレス
・精神的ストレス
・科学的ストレス
・食事栄養
・筋力低下
・認知の歪み
一病多因だからこそ、画像ではなく「あなたの身体全体」を診ることが必要だと考えています。
もちろん、上記の他にも「不調の原因」はあるかもしれません。
それを諦めずに一緒に探し、元気で安心して前へ進めるようお手伝いをさせていただけたらと考えております。
お困りの際には、ぜひ当院にご相談ください。
この記事を書いた人
中野 貴博(なかの たかひろ)
横浜市中区の整体 よこはま山手治療院 院長 あん摩マッサージ指圧師
当院のコンセプトである「痛みや症状に振り回されることなく、やりたいことをやりたい時にできる身体作りを目指すこと」を患者さんに体現していただくため、日々活動しています。
昭和54年8月20日生 石川県金沢市出身(横浜在住20年ほど)
血液型O型
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