コルセットをした方が(腰痛は)良くなるの?
「突然のギックリ腰!!」
「慢性的な腰痛!」
そんな時に
「コルセットってした方が良いのかな」、「いや、そもそもするべきなのか」、「いやいや、みんなやってるし…」、「そうそう、テレビでも言ってたしな。。。」
そんなことを考える方も多いと思います。
実際に、当院にご来院の患者さんの中にも、施術前に「あ、今コルセット外します。」とおっしゃる方や、「コルセットって外した方が良いですか?」と質問される方もいらっしゃいます。
しかし、効果は人によって様々ですよね。
コルセットやサポーターをしていて、「痛みが楽に感じる」という方もいらっしゃれば、「うーん、あんまり変わらないな」という方もいらっしゃいます。
実際には、どうなのでしょうか?
当院が、患者さんにどのようにお答えしているのか、それを日本義肢装具学会誌に書かれた論文をもとに、ご紹介致しますね。
コルセットに科学的根拠はない??
「コルセットに科学的根拠はないのか?」
日本義肢装具学会誌に掲載された中川医師によると…
——
保存療法の一環として使用する装具の目的は、 ① 腰痛の軽減と②腰椎運動の制限(あわよくば固定)③心理的効果 であるが、はたしてその目的(特に①と②)は達成されているのであろうか?)
腰椎装具は腹腔内圧を上昇させ、腹腔内圧が上昇すると脊椎の荷重分担が減少するという理論(いわゆるラグビーボール理論)は有名であるが、その後の研究では必ずしも正しくはないことが報告されている。
したがって、腰椎装具によって椎間板内圧の減少効果が起こるという結果も信愚性が乏しくなる。
また腰椎装具によって腰椎の大まかな運動の制限はできるが、分節運動の制限はできないとの報告がある。
腰部コルセットが腰痛に対する予防や治療に有効であることを証明した報告はないと言い放っている。
また、腰部コルセットの長期装着は、腰の筋力を低下させるだろうという常識(この常識もエビデンスに乏しいと別の医師は言う)を考えると、装具への過大な期待はできないという印象を受ける。
——引用ここまで——
内容に関しては、分かりやすいように少し編集してありますが、まとめると、コルセットについて言われているメリットは、科学的根拠に乏しいということになります。
腹圧を上昇させ、腰を安定させるだとか、腰痛を軽減させるだとか、そういったことに根拠はないと言っているんですね。
さらに、コルセットを装着することで、「筋力が低下するんじゃないか」という噂も、根拠に乏しいと書いています。
では、「心理的要因」に関してはどうなのか?
先ほどの引用させていただいた文章にも「心理的要因」について記載されていましたね。
コルセットをしていると…
「何だか楽な気持ちがする」
「守られている感じがして安心」
「付けてないと不安な気持ちがする」
当院でも実際にこのようなお声を耳にします。
上記のような、コルセットを装着することで心理的にプラスに作用するのであれば、効果はあるでしょう。
例え、付けること自体に根拠がなくても、付けている本人が、痛みの軽減を体感しているのであれば、それはその時点で効果があったと言えるわけで、当院でもそういう方には、「全然付けていて大丈夫ですよ」とお話します。
しかし、反対に
「(コルセットを)していると苦しい」
「蒸れて暑いんだけど、しなきゃいけないと思ってる」
といった場合には、コルセットを装着することがマイナスに働いていると考えられるため、「全然する必要はありませんよ。外して生活していただいて大丈夫です。」とお話させていただきます。
コルセットを装着するという行為は、人によって感じ方が違うということですね。
その人が、どういう風に感じるか、つまりどのように心理的に作用するかで、装着をするかしないかの判断をすれば良いと考えています。
筋力の低下に関して
では、続いて「筋力の低下」に対してです。
これも、先ほどの引用にありましたが、「筋力の低下」に関しても、医師にとっても「ただの噂」であって、根拠に乏しいということなんですね。
実際に、コルセットを装着して、筋力が落ちるのかという実験をした人もいるらしいのですが、その時には一切筋力の低下は見られなかったという文章を読んだこともあります。
ということは、必要以上に、コルセットに対して警戒することでもないですし、逆にコルセットに過剰な期待(装着すれば、腰痛が良くなるなど)をすることも正しくはないということになりますね。
まとめ
では、ここまでをまとめます。
- コルセットを装着することで腰痛が良くなるという情報は根拠に乏しい
- ただ、心理的要因を考慮し、プラスに働く場合は、装着してもOK
- 筋力の低下は噂に過ぎず、過度に心配しなくても良い
こういった感じになります。
ただ…先ほどの引用した文章には、こうも書かれています。
—–
腰椎装具の基礎的研究が、質的にも量的にも不十分であることを考えると、直ちに腰椎装具悲観論を述べるわけにはいかない。
幾多の先人が病態に応じて工夫を凝らし、長い年月を経て現在も使用されている装具に、臨床的にもその有効性が認められることは経験されるところであり、心理的効果のみとはとても思えない。
今後は、そのエビデンスを追究する多くの研究が待たれる。
—–
医師も経験則として、コルセットを付けることで、腰痛が改善したり、症状が軽くなったと感じる人がいることは理解していて、それは決して心理的な作用だけではないだろうと書かれているんですね。
今後の研究次第では、根拠(エビデンス)も出て来るかもしれませんし、全て「心理的な作用」で片づけられるかもしれませんし、分からないということですね。
当院の考える結論としては、装着して楽に感じるのであれば、コルセットをしても構いませんし、もし付けることに面倒だなとか、苦しい・暑いのにしなければならないと思って装着していると、マイナスな要素も多いので、無理にやる必要も全くないということです。
ただ、長期的にコルセットやサポーターを身に付けている方は、「固定される時間」が長くなる、あまり動かさなくなることがあります。
近年、腰痛などの「慢性痛」に対しては、「安静」で改善することはない、「動かした方が良い」といったことが言われています。
コルセットやサポーターをすることで、必要以上に患部を大事にし過ぎることが、改善に向かうわけではないことは、ご理解いただいた方が良いかもしれません。
コルセットに関しては、日々患者さんからも質問されることです。
上手に使っていただければよいかなと思います。
お電話ありがとうございます、
よこはま山手治療院でございます。