【「筋力の低下」と「痛み」の関係について】
こんにちは。
よこはま山手治療院、院長の中野です。
今回は、ご来院者の方にもよく質問される「筋力低下」と「痛み」についての関係を、当院の考察を交えながらお送りして参ります。
「筋力低下」のよって起こる痛み
まず、結論から申し上げることになってしまいますが、「筋力低下」のよって「痛み」は起こり得ます。
実際に、どこが痛むかにもよりますが、「膝の痛み」を例に挙げると分かりやすいかもしれません。
「膝の痛み」の原因は、色々考えられますが、まず前提として「関節の変形」や「軟骨がすり減っていること」が、痛みの原因の全てではありません。
ある程度の年齢になれば、ほとんど方が、画像を撮れば関節の変形があるでしょうし、軟骨もすり減ってるでしょう。
10代や20代の頃とは、明らかに形状が変わりますし、逆に70歳の方が20歳人と同じ関節の形状をしている方が珍しいとも言えますよね。
しかし、関節が変形していようが、軟骨がすり減っていようが、痛みがない人もいます。
大事な事なので、もう一度申し上げますね。
関節が変形していても、痛みがない人はないんです。
ヘルニアがあっても、狭窄があっても、痛みがない人はないんです。
もちろん、関節の変形や軟骨のすり減りが、全く痛みと関係ないと申し上げるわけではありません。そういう原因で痛みが起こる方もいらっしゃるかもしれませんが、それが全てではないということなんです。
よく病院などでも「歳のせい」、「加齢のせいだから仕方ないね」と言われることがあるようです。
しかし、例えば『女性なら70歳を超えると全員がもれなく膝に痛みが出ます』という法則があるのなら、それは「加齢」という言葉で片付けても良いかもしれませんが、実際は、80歳90歳でも痛みを感じず、しっかり歩いている方はいらっしゃいますよね。
ということは、何か別の原因があると考えた方が良くて(痛みの原因は一つとは限らない)、その中に「筋力低下」も含まれると考えた方が良いんですね。
実際に、「加齢」つまり、年齢を重ねると「筋力低下」は起こります。(鍛えていなければ)
「症状」、つまり「痛みや痺れ」の原因は、一つではなく様々な要因があるわけで、「骨の形状」も可能性がゼロではありませんが、実際に、筋トレをしたことで「膝の痛み」がなくなる方がいらっしゃいますので、それだけが「膝の痛み」の原因ではないということです。
その他の症状、「腰痛」なども「筋トレや運動をすること」で痛みがなくなる例は、数多くあります。
「筋力低下」はなぜ起こるのか?
上記の内容でも少し触れましたが、「加齢」によって「筋力低下」は起こります。
ですから、「年齢」や「加齢」で痛みが起こるとされるのは、「関節の変形」よりも「筋力低下」の側面が強いと考えられるのですが、人間の身体は、おおよそ20歳前後が一番筋力があるとされ、そこから年々1%ずつ筋力が低下すると言われています。
ですから、仮に60歳の方であれば、20歳時と比較すると、かなりの筋力が低下している状態であるとも言えます。
これは、別に寝たきりになったからとかでなく、歩いたりの日常運動をしていても起こります。
よく施術中の会話の中で筋力低下についてお話していると、「歩いているから大丈夫」とお話される方がいらっしゃいます。
決して「歩くことが意味がない」と申し上げているわけではないのですが、「筋力」に関しては、歩いても筋力アップは起こりにくいですし、筋力低下を防ぐことにはなりません。
マラソン選手は、あれだけ長い時間走れる持久力はあっても、足は細いですよね。
むしろ筋骨隆々のマラソン選手は見たことがないです。
ということは、いくら歩いたり走ったりしても、筋力低下は起こり得るということです。
これは、ストレッチなども同じで、「運動している感」はあるかもしれませんが、筋肉や筋膜を伸ばしているだけでは、筋力のアップにはなりません。
同じように「施術」にも筋力をアップさせる効果はありません。
筋肉に負荷をかけることでしか、筋力をアップさせることも、維持することもできないということです。
つまり、「筋力低下」が起こる原因としては、加齢の影響が大きいにしても、適切な運動をしていないからということになります。
実際に症状が改善される
こちらのブログなどでもご紹介しておりますが、以前私がセミナーで勉強させていただいた京都の『央整形外科』の小島先生は、一般的な処置はほとんどせず、「患者さんに筋トレをしてもらい筋力をつけてもらうことで、症状をなくして行きましょう」という一般的な整形外科とはちょっと違う診療をされています。
一般的な処置というのは、湿布や電気療法、いわゆる「リハビリ」と呼ばれるものです。
慢性的な痛みの原因は、「筋力不足」であるとお考えで、ご自身も椎間板ヘルニアをお持ちでしたが、運動を続け、完治(椎間板ヘルニアが消失)された経験をお持ちです。
80歳の女性であろうが、負荷をかけた筋トレを行ってもらい、痛みを完治させている先生です。
当院でも、実際に筋トレを指導して、良くなられている方がいらっしゃいます。
「完治」と「寛解」
「完治」とは、文字通り「完全に治った状態」を指しますが、「寛解」とは、病気が一時的に寛(ゆる)くなり解(と)けたような状態になることを意味しています。
つまり、寛解とは「治った」わけではなく、(薬や湿布などの何らかの処置をしていれば)、症状が出ない状態とも言えます。
一般的な整形外科で行われるような処置は、「寛解」は可能かもしれませんが、「完治」に導くことは難しいと考えた方が良いでしょう。
- 痛み止めを飲んでいれば痛みが出ない
- 湿布を貼っていると楽になった感じがする
- 電気や温めると少し楽
というような状態は、「完治」とは言わないということです。
しかし、「筋トレ」は自分自身の筋力ですから、何かに頼っている状態ではありません。
自分自身が運動して、筋肉を付けて行くわけですから、ついた筋肉はあなた自身の支えとなってくれます。
こうして見てみると「寛解」を目指すよりも、「完治」を目指すべきことが分かりますね。
新型コロナウイルス騒動で「運動不足」の人が増えている?
2020年は、新型コロナウイルス騒動で、外出が制限され、テレワーク化が進み、運動不足になった方が増えました。
- 通勤時に歩かなくなった
- スポーツクラブが休みで行けなくなった
- 出かけることができず、家だと運動できないから
上記のような理由で、運動する機会が少なくなったことが挙げられます。
当然ながら、筋肉は「適応」によって変化しますので、使わない状態が長く続けば、「必要のないもの」と身体が判断し、筋力は低下します。
しかし、例えば筋トレを定期的に行っている人であれば、7週間筋トレを休んだとしても、その後7週間、再び筋トレをすると、前後をプラスした14週間前よりも、筋肉が付いたという研究があるらしいです。
これは「マッスルメモリー」と呼ばれ、ちょっと休んだくらいでは簡単に筋力低下は起こらないらしいですが、なかなか、筋力をアップさせたりするのは難しい中、しっかり休んで、しっかり運動した方が筋肉は付いたらしいですね。
ということは、一概に休むことがいけないわけでもないのですが、しかしまぁ一度ついた筋肉も再び運動しなければ、落ちて行ってしまいますので、注意が必要です。
まして、慢性痛の原因は、「動かさないこと」つまり「血行不良」によって起こることもあります。
テレワークでますますデスクワークの時間が長くなった、家から出ないので、いつも同じ姿勢でいることが多くなったなどの方は、痛みが悪化しやすいとも言えます。
そういった方は、筋トレも必要ですが、歩いたりも有効ですし、とりあえず身体を動かすことで、慢性痛の改善や予防につながることもあります。
筋肉のことをもっと知りましょう
「筋肉」と一言で表されますが、実は筋肉にも種類があります。
- 骨格筋
- 平滑筋
- 心筋
上記の3つが身体の筋肉として分類されています。
- 骨格筋
「骨格筋」は、いわゆる皆さんが想像している筋肉の役割、主に「自分の意志で動かせる筋肉」を指します。
全身に広く存在し、アウターマッスル、そしてインナーマッスルなどと呼ばれることがあります。
- 平滑筋
「平滑筋」は、主に内臓などに分布し、胃や腸などにあります。
「自分の意志では動かせない筋肉」つまり、自律神経によって働きが調節されている筋肉とも言えます。
胃には、入って来た食べ物を消化し、腸に送るために蠕動運動というものが起こります。
同様に、腸にも食べ物を送るために「蠕動運動」が起こります。
この「蠕動運動」を行うために必要なのが、「平滑筋」で胃や腸が「グーッ」と鳴るのは、蠕動運動によって起こっています。
「よし、今から消化活動のために、胃を動かそう」と思ってできるものではなく、食べ物が胃に入る → 消化活動 → 蠕動運動 という流れが起こりますので、自分の意志ではなく、自律神経によって起こっているということになります。
- 心筋
これは、文字通り「心臓」を動かしている筋肉です。
そうなんです。
止まることなく動いてくれている私たちの心臓は、それ自体が筋肉であり、自ら収縮と弛緩を繰り返してくれているんですね。
これも、自分の意志で変えられえるものではないので、自律神経によって調節されています。(全力疾走をした時や、精神的緊張によって勝手に心拍数が変化しますよね。)
筋力低下が起こるのは、「骨格筋」
これまで「筋力低下」について筆を進めて参りましたが、それは全て「骨格筋」によるもので、「平滑筋」などの自律神経によって支配されている筋肉は、なかなか鍛えるのも難しいですよね。
「骨格筋」は自分の意志で鍛えられる、つまり鍛えようと思って鍛えられる筋肉ですから、筋力低下が起こったとしても、何歳からであっても、鍛えることは可能です。
よくお仕事をリタイアされて、スポーツクラブに通うようになり、筋トレにハマり、そこからシニアのボディビルダーになる方もいらっしゃいます。
ということは、何歳からでも「骨格筋」は鍛えることが可能で、筋力低下に抗うことが可能だということになります。
少し余談ですが、よく整形外科などで「筋肉を弛める薬を処方されて服用している」といった方がいらっしゃいます。
「筋肉を弛める薬」とは何でしょう。
そう聞くと、何だか自分の辛い部分の筋肉が、柔らかくなるイメージを持つかもしれませんが…
実際に、その薬が「骨格筋」と「平滑筋」を区別できるのでしょうか?
「心筋」も筋肉ですから、薬がそれを見分けて、しかも「自分の辛い部分の筋肉だけ」に作用するなんてことが起こり得るのでしょうか?
「筋弛緩剤」というものがありますが、当然ながら、危険なものですよね。
筋肉は、弛緩すればいいだけではありません。
例えば、「膀胱括約筋」や「肛門括約筋」という筋肉があります。
文字通り「膀胱」や「肛門」を締めている筋肉ですが、それが、弛緩してしまったら……と想像するだけで怖いですよね(笑)
批判したいわけではありませんが…薬が、自分の辛い部分の筋肉だけに都合よく効くということは、想像しがたいから、何を言わんとしているかご理解いただけるかと思います。
筋肉を鍛えましょう!
「筋力は、20歳をピークに年々1%ずつ低下する」
ということは、80歳くらいになる60%くらい低下してしまっている可能性があるんですね。
しかし、それは何もしなかった場合であって、筋肉は鍛えることで筋力をアップさせることも可能ですし、筋肉量を増やすこともできます。
シニアのボディビルダーの方を見れば、何歳からでも筋肉は付くことがご理解いただけますよね。
(決して、ボディビルダーになりましょうということではありません。)
では、具体的にどのようにして行けば筋肉は付きやすくなるのかを考察して行きましょう。
できるだけ重い負荷で最大限のスピード
例えば、下半身強化をする場合、「スクワット」が有効ですが、一般的な方法として、「ゆっくり下ろして、ゆっくり挙げる」といったことが言われることがあります。
しかし、この方法も間違いとは申しませんが、「ゆっくり下ろす」のは良いのですが、挙げる時には、「ゆっくり」ではなく、「最大限のスピード」の方が効果が高いと言われています。
これは、先ほどの小島先生が推奨されておりますが、ボディビルダーなどでゆっくり挙げている人はあまりおらず、自分が挙げられる最大限に重い負荷を、できるだけ早く挙げているんですね。
ゆっくりのスピードだと、最大限に重い負荷を扱うことができず、回数をこなすことを前提としてしまうため、筋力はあまりつかないかもしれません。
前提として、「筋力」は「適応」です。
例えば重い負荷を持たなければならない時、再び同じ刺激が来た時に、適応できるように筋力をアップさせておこうという身体の反応です。
ということは、重い負荷を扱って行かなければ、「適応」は起こりにくいんです。
もちろん、「軽い負荷で回数をこなす方法」もあることは理解しておりますが、そのやり方で適応が起こるため、筋肉が大きくなるのは時間がかかるかもしれません。
また、筋肉を大きくすることが目的ではなく、「症状をなくすため」に行うわけですから、ボディビルダーのように筋肉を大きくすることだけが目的ではありません。
あくまで、「強くすること」が目的なわけですから、「効率」を重視しましょう。
筋力不足で、膝が痛いという場合、太ももの筋肉を強くして、膝を支えなければならないんです。
結果的に筋肉は大きくなる(太くなる)かもしれませんが、強くなっていなければいけません。
ですから、重い負荷をかけて行った方が良いんです。
やりすぎも良くない
重い負荷を扱う場合、「オーバーワーク」は良くありません。
鍛えるためには毎日やらなければいけないなんてことはありません。
むしろ、毎日やってしまうと、オーバーワークになってしまい、「痛み」が起こってしまいます。
「痛みをなくすため」にやっているトレーニングで、「痛み」が起こってしまっては、意味がないですよね。
ボディビルダーの方たちも、毎日やっているようなイメージをお持ちかもしれませんが、ちゃんと回復期間を設けている方がほとんどですし、「今日はこの部位、次の日はまた違う部位」といったように、毎日鍛えていたとしても、同じ筋肉を鍛えることはせず、違う場所を鍛えていたりします。
小島先生は、週に一回で充分だとおっしゃいます。
中5日しないと筋肉は効率よく回復しないということも言われます。
決して、毎日やる必要はありませんので、注意してくださいね。
栄誉のことも考えて
筋肉は、「タンパク質」ですから、効率良く筋力を付けるためには、「タンパク質」を摂取した方が、より効果的だと考えられます。
小島先生は、「食事はそこまで関係ない」とセミナーでおっしゃっていましたが、当院の考えとしては、筋肉の材料であるタンパク質を摂取しておいた方が、効率は良くなると思っています。
もちろん、「適応」ですから、タンパク質がなくても、身体は適応して行くのかもしれませんが、例えば「食事」を摂らない、つまり断食状態になると、身体の脂肪よりも筋肉が先にエネルギーとして使われると言われています。
もちろん、エネルギーが不足することがない食事をしていれば良いのですが、筋肉が分解されて、エネルギーにされてしまうと、せっかく鍛えたのに、勿体ないことになってしまいますので、注意が必要です。
当院ではプロテインを扱っておりますが、「鉄・タンパク質」の不足で、うつ症状やパニック障害、自律神経の乱れが起きやすいことが、近年医師からも言われるようになりました。
日本の成人女性のほとんどは、鉄・タンパク質の不足が起こっているとも言われていますので、そういった意味でも「タンパク質」を摂取しておいた方が、効率よく筋力がアップするでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「痛み」や「症状」の原因は、一つに絞れるものではなく、様々な要因を考慮していくべきですが、その中に「筋力の低下」も含まれるということですね。
- 人間の筋力は、20歳をピークに年々1%ずつ低下する
- 実際に、80歳90歳の方もトレーニングを行い、症状が改善している
- 筋トレは、「寛解」ではなく、「完治」に向かわせることができる
- 新型コロナウイルスの影響で、運動不足の人が増えている
- 筋肉にも種類があって、薬はそれを見分けることなんてできない
- 鍛えるには、最大限に重い負荷&最大限のスピードで
- でも、やり過ぎは、良くない。週に一度で充分。
- 栄養も大事に!
ということで、当院でも筋トレや栄養についてのアドバイスを行っております。
何か気になることがございましたら、施術中にも大丈夫ですので、ご相談くださいね。
今回は、「筋力低下」についてでした。
ご覧いただきありがとうございました。
お電話ありがとうございます、
よこはま山手治療院でございます。